心不全の症状とそのわけ -肺うっ血と体うっ血の症状と治療-

心不全の患者様にみられる症状とそれが起こる理由と治療、また、心不全の重症度や検査の内容を理解することは療養生活を送るうえで大切なことです。

心不全の症状はなぜ起こる?

心不全により心臓のポンプ機能が低下し、心臓から体全体に十分な血液が送り出せないことによる症状や、心臓が血液を送り出すことができなくて心臓そして肺に血液が滞る(肺うっ血)ことによる症状、そして、心臓が体から十分に血液を受け取れないことにより体に血液が滞る(体うっ血)ことによる症状が出現します。

主な心不全症状とその治療

夜間の呼吸困難

心不全が重症化して心臓が体側にうまく血液を送り出せなくなると、心臓だけでなく肺にも血液が滞り(肺うっ血)、肺に水分がしみだして肺が上手く酸素を取り込めなくなります。特に夜間、臥位(寝る姿勢)を取ると、心臓に戻ってくる血液の量が増すことで肺うっ血が悪化し、息苦しくなり(夜間発作性呼吸困難)、座ることで症状が和らぐため患者様は起き上がる姿勢を自然に取るようになることがあります(起座きざ呼吸)。

呼吸困難の治療

薬物治療としては、心臓のポンプ機能を改善するための薬や、心臓が血液を送り出しやすくする薬、体うっ血の改善のために水分を排出しやすくするための薬などがあります。一方、薬物治療以外の治療として、酸素療法やマスク式の人工呼吸器(NPPVエヌピーピーヴィ 装置)を用いた呼吸補助療法なども行われています。
NPPV装置の中で、最近ではASVエーエスヴィ (Adaptive Servo Ventilator)という肺うっ血の改善にむけた専用の装置が自宅で使用されることがあります。これは、夜間寝るときにマスクから肺に空気を送り込んで呼吸を助けるとともに、過剰な血液の戻りを防ぎ、肺うっ血を改善することを期待して使用されています。

心不全の治療法についてはこちら

むくみ(浮腫)

心臓のポンプ機能が低下して心臓が体から十分に血液をうけとれない(右心の機能低下)ことにより、体に血液が滞る(体うっ血)ことによる症状が出現します。そうすると、全身のむくみ(浮腫)や体重増加がみられます。むくみは、全身といっても重力の関係で両足にみられることが多いです。指で数秒間押して離したときに、指の痕がしばらく残るようなむくみは、心不全などによって水分が溜まっている可能性が高いといえます。

むくみの治療

むくみに対しても、体液貯留を解消することを目的に、利尿薬を中心とした薬物療法が行われます。
ただし、むくみを完全に取り去るほどに大量の利尿薬を使ってしまうと、逆に脱水症を起こしてしまうことがあるので注意が必要です。

心不全の重要度

AHA/ACCステージ分類を参考に作成

慢性心不全患者様は、長期的に進行性に心臓の機能が低下していきます。その病期の進行をA〜Dまでの4段階で示したものがAHA(米国心臓協会)/ACC(米国心臓学会)のステージ分類です。症状が発現する前のステージBでは、心機能低下を防ぐために薬物治療を主体とする治療が行われ、症状発現後は重症化して治療抵抗性にならないように入院を防ぐための包括的な治療が検討されます。
大事なことは、心不全の症状が出てきた時点でステージはCまで進んでしまっているために、症状が出ていないステージAやBの段階から積極的に治療を始めることです。症状がないからといって治療を中断したり、治療開始を躊躇することは適切ではありません。

心不全の検査の例

胸部X線検査

心臓が大きくなっていないか、肺に血液が滞ってしまっていないか(肺うっ血)など、心不全の存在や重症度を予測することができます。比較的簡単に行える点が利点ではありますが、この検査で問題がなさそうに見えても、必ずしも心不全がないとは言えないことがあります。

心エコー検査

心臓の形や大きさ、動いている様子、血液が送り出される様子を観察して、心臓のポンプ機能を評価します。心不全の有無や程度だけでなくその原因についての情報が得られます。

血中脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNPビーエヌピー)濃度

脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)は心室に大きな負荷がかかると、血中に多く分泌されます。血中のBNP濃度を測ることによって、心不全の重症度の目安になります。検査結果は数値として表示されるので大小が理解しやすいですが、個人差があったり、必ずしも万能な検査ではないため、あくまで心不全の診断の参考に留める必要があります。

パルスオキシメータ

心不全の患者様は、安静時には予測できないほど労作時や睡眠時に血液中の酸素が不足して、心臓その他の臓器に負担がかかることがあります。腕時計型のメモリー付のパルスオキシメータという機器を、終日または終夜装着して、動脈血中の酸素飽和度を簡単に検査することができます。

治療によって症状が改善したら

心不全は、患者様の症状や重症度に応じて治療が行われますが、治療の効果があって症状が改善したとしても、心不全という病気自体が治るわけではありません。よい状態を長く維持するために、また、急性増悪を起こして入院ということにならないように、主治医の指示にしたがって、治療を継続していくことが大切です。